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2020.5.28  【今週はこれを読め! ミステリー編】人間の残酷さを浮かび上がらせる作品集『おれの眼を撃った男は死んだ』

シャネル・ベンツ『おれの眼を撃った男は死んだ』(東京創元社)には、優れた短篇に与えられるO・ヘンリー賞を2014年に獲得した「よくある西部の物語」を含む10の小説が収められている。知っている限りベンツが邦訳されるのはこれが初めてだ。テネシー州メンフィス在住で、ローズ・カレッジで教鞭を執っているという以外の経歴はわからない。

2020.5.26  【今週はこれを読め! SF編】7分間のお楽しみ。いずれ劣らぬ十一篇。

昨夏に刊行された『5分間SF』につづく、草上仁の短篇集。〈SFマガジン〉に1991年から2006年にかけて発表された十篇に、書き下ろしの一篇を加えた一冊だ。

2020.3.24  【今週はこれを読め! SF編】ケン・リュウ編の中国アンソロジー第二弾!

『折りたたみ北京』に続く、現代中国SFを紹介するアンソロジー。編者ケン・リュウは「序文」で、こう告げる。

2020.3.17  【今週はこれを読め! SF編】〈暦法〉宇宙国家への異端の侵攻。めくるめく展開のスペースオペラ。

エキゾチックな設定のもとで展開されるモダン・スペースオペラ。原書は2016年に刊行され、ローカス賞第一長篇部門を受賞している。

2020.3.10  【今週はこれを読め! SF編】浪漫の帝都と大陸の新興都市が舞台、波瀾のスチームパンク

和製スチームパンクの第三作。設定は第一作、第二作からつづいているが、物語としては独立しているので、この巻だけ読んでも支障はない。ただし細かいくすぐり----たとえばヒロインの伊武(イヴ)が長須鯨の描かれた箱を大切にしていて、誰かが腰掛けようとすると「椅子じゃない」と怒るくだりなど----は、シリーズを追いかけているファンへのサービスだ。そのあたりも含め、大森望さんが「解説」でシリーズ全体の概要をまとめてくれている。本書から読む場合は、まず「解説」からどうぞ。

2020.2.18  【今週はこれを読め! SF編】「珍しさ」より「質」を重視した、選りすぐりの十篇。

過去十年に発表された日本SFの傑作選。『2』は「新鋭篇」で、採られているのは次の10篇。

2020.1.28  【今週はこれを読め! SF編】悲しげな歌を歌う怪獣、全体主義に抗う《人間》

原著は1965年刊。邦訳は、まず67年に大光社《ソビエトS・F選集》の一冊として『怪獣17P』の題名で刊行、78年にはサンリオSF文庫で原題に即した『旅に出る時ほほえみを』として再刊、そして歳月を経たいま、こうして白水Uブックス《海外小説 永遠の本棚》に収められた。つごう三回、それぞれ傾向の異なるレーベルで、それぞれの読者層へと届けられたわけだ。それだけの力を持った名作である。

2020.1.14  【今週はこれを読め! SF編】ラヴクラフトを切歯扼腕させる十六篇

H・P・ラヴクラフトの系譜に連なるフィクションは、ひとつの文芸ジャンルを形成するほどである。ご本尊はその気はなかったのだろうけれど、彼の死後、オーガスト・ダーレスによって体系化された「クトゥルー神話」が、合い言葉さえ唱えればだれでも入会できる結社というか、わかりやすいアイテムに満ちた二次創作製造エンジンのようなもので、それが自走的に機能しているのだ。

2019.12.24  【今週はこれを読め! SF編】寄稿者の持ち味が十二分に発揮されたオリジナル・アンソロジー

創元SF短編賞出身作家を中心に編まれたオリジナル・アンソロジー《Genesis》の第二巻。第一巻『一万年の午後』(http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2019/01/08/144902.html)と同様、ホームグラウンドだけに、寄稿者それぞれが自分の持ち味をのびのびと発揮している。

2019.12.10  【今週はこれを読め! SF編】複雑にもつれる多民族・多文化の未来史

アリエット・ド・ボダールは2006年から作品発表をはじめ、これまでにネビュラ賞、ローカス賞、英国SF協会賞を受賞し、各種の年刊SF傑作選へも多くの作品が採られている、旬の作家だ。彼女がデビュー直後から書きついでいるシリーズ《シュヤ宇宙》は、コロンブスと同時期に中国人がアメリカ大陸に到着し、独自の植民地文化を発展させた時間線上に展開する、長大なスケールの人類史だ。本書は、同シリーズこれまでに発表された31作品のうちから、9作品を選んで訳出した日本オリジナル短篇集だ。

2019.12.4  【今週はこれを読め! SF編】斬新なアイデアで展開される、決定論と自由意志をめぐる哲学的洞察

今年五月に原書刊行されたばかりのテッド・チャンの第二短編集。この早さでの邦訳は嬉しい。(12月4日発売)

2019.11.28  【今週はこれを読め! SF編】困難なミッションに挑む、量子魔術師と個性溢れるメンバーたち

舞台となるのは人類が宇宙へと広がり、複雑な人種的葛藤と利益対立の多国家文明を築いている遠未来。"魔術師"と異名をとる主人公ベリサリウス・アルホーナは、量子的感覚・思考を備えたホモ・クアントゥスのひとりだ。彼はその驚異的な能力をもっぱら詐欺に発揮している。詐欺といってもケチな違法行為ではなく、曲者や権力を相手取った知恵比べといった側面が強い。

2019.10.27  【今週はこれを読め! ミステリー編】最も読むべき翻訳ミステリー・アンソロジー『短編ミステリの二百年vol.1』

21世紀に入ってから、という限定付きではあるが、これは最も読むべき翻訳ミステリー・アンゾロジーになるであろう。

2019.10.8  【今週はこれを読め! SF編】著者初の短篇集。文化と歴史への洞察と、卓越した構成力、語りの技巧。

小川哲はハヤカワSFコンテストに投じた『ユートロニカのこちら側』で大賞を射止めてデビュー、受賞後第一作となる『ゲームの王国』で日本SF大賞と山本周五郎賞を受賞。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いである。現代社会がはらむ諸問題への怜悧な眼差しと、複線的なストーリーを緊密に束ねる卓越した構成力は、舌を巻くばかりだ。

2019.10.7  【今週はこれを読め! ミステリー編】失われた人生のシークエンスを探す冒険行『戦下の淡き光』

こんなことが本当に起こりえたのかという人生の瞬間についての小説だ。

2019.10.1  【今週はこれを読め! SF編】有無を言わせぬ怒濤の展開! 正調ワイドスクリーン・バロック!

ブライアン・W・オールディスが激賞、この作品のために「ワイドスクリーン・バロック」なるサブジャンル呼称を提唱までした話題作がついに翻訳された。

2019.9.21  【今週はこれを読め! ミステリー編】何が起こるかわからない『11月に去りし者』

小説は思いがけないことが起こるからおもしろい。

2019.9.15  【今週はこれを読め! ミステリー編】移民問題に直面するインドリダソン『厳寒の町』

憎悪は液体と同じで、一定量を超えれば溢れるのを止めることはできない。

2019.9.6  【今週はこれを読め! ミステリー編】夏の終わりに読みたい二つの中編『エレベーター』『わが母なるロージー』

暑さ寒さも彼岸までと言う。まだ夏が終わらないうちに、この本を読んでしまおう。

2019.8.27  【今週はこれを読め! SF編】ゲンロン出身作家の意欲作から、ベテラン津原泰水の傑作戯曲まで

オリジナルアンソロジー・シリーズ《NOVA》の最新刊。前巻より、雑誌のような巻号表記となった。

2019.8.20  【今週はこれを読め! SF編】自由意志をめぐる鋭角的な思考実験を、青春小説のスタイルで語りきる

粒ぞろいの短篇集。収録作六篇がどれも年間ベスト級の傑作である。事実、「なめらかな世界と、その敵」「ゼロ年代の臨界点」「美亜羽へ贈る拳銃」「ホーリーアイアンメイデン」の四篇は、創元SF文庫の年刊日本SF傑作選(大森望・日下三蔵編)に採られている。あとの二篇は、ポストサイバーパンクの異色作「シンギュラリティ・ソヴィエト」と、書き下ろしの「ひかりより速く、ゆるやかに」。

2019.7.23  【今週はこれを読め! SF編】冬の物語、夢の物語、大胆なガジェットと切ない恋情

冬の物語、あるいは冬へと向かう物語。SFの歴史のなかで、いくつも印象的な作品が生まれてきた。ライバー「バケツ一杯の空気」、ティプトリー「愛はさだめ、さだめは死」、ル・グィン『闇の左手』、コーニイ『ハローサマー、グッドバイ』。本書はその系譜に連なる一冊だ。

2019.7.20  【今週はこれを読め! ミステリー編】スウェーデン発の歴史ミステリー『1793』

今ここにいる自分の当たり前が、違う場所、違う時間では当たり前ではないことを小説は気づかせてくれる。

2019.7.16  【今週はこれを読め! SF編】ミルハウザーの新しい試み、しかし変わりのない魔法の言葉

スティーヴン・ミルハウザーの言葉は、ささやかな、しかし鮮やかな魔法のように、読み手の世界を変えていく。『イン・ザ・ペニー・アーケード』『バーナム博物館』『ナイフ投げ師』『十三の物語』といった短篇集に収められた諸篇を読むとき、ぼくの脳裡に浮かぶのは、十八世紀スイスの時計職人が生みだした精妙な機械細工だ。小さな空間に驚異と憧憬が詰まっている。

2019.6.11  【今週はこれを読め! SF編】実体と魔物に分かれたひとり。止められない戦争をいかに生きるか?

上田早夕里は小松左京の名を冠した公募新人賞からデビュー、その受賞経歴にふさわしく、人類史的スケールの視座から、しかしいっぽうで地に生きる個人の意志や情動を取りこぼさずに描く、骨太の作品を送りだして、読者の注目を集めてきた。そのいっぽう、《妖怪探偵・百目》や《洋菓子》など、別の領域の作品でも一定の評価を得ている。きわめて懐の深いクリエーターといえるだろう。

2019.5.24  【今週はこれを読め! ミステリー編】"世界一優秀な探偵"コール&パイク登場『指名手配』

あなたの世界にかぎ裂きができてしまい、涙にくれているとする。

2019.5.21  【今週はこれを読め! SF編】美のユートピアで繰り広げられる人間模様

『永遠の森 博物館惑星』の十九年ぶりの続篇。

2019.5.14  【今週はこれを読め! SF編】場所が特定できぬ孤峰、スパゲッティコードとしての世界

これは旅の物語であり、物語という旅である。地図はない。行ってみないと、その先がどうなっているかわからない。

2019.4.23  【今週はこれを読め! SF編】天皇機関vs.粘菌機関 特撮映画のような痛快活劇

カバー袖の登場人物一覧が絢爛豪華だ。南方熊楠、福来友吉、江戸川乱歩、西村真琴、佐藤春夫、宮澤賢治、石原莞爾、北一輝、......。

2019.4.19  【今週はこれを読め! SF編】第一級の脱出不可能ミステリー『火星無期懲役』

火星は地獄だ!(ジョン・W・キャンベル風に)

2019.4.16  【今週はこれを読め! SF編】大胆なSFの設定に、現代社会の問題を写しとる

白水社の《エクス・リブリス》は、上質な海外文学を届けてくれる、小説読みにとっては慈雨のごとき叢書だ。そこに初めて収められたジャンルSFが本書である。七篇を収めた短篇集。著者のプロフィールを知って、のけぞった。

2019.4.9  【今週はこれを読め! SF編】はかない記憶と傷つく身体のエロティシズム

オリジナルアンソロジー『NOVA 5』に発表した短篇SF「愛は、こぼれるqの音色」と、書き下ろしの長篇ミステリ『密室回路』を対にして収めた一冊。物語はそれぞれ独立しているが、設定は共通しており、テーマ面でも強い結びつきがある。

2019.4.2  【今週はこれを読め! SF編】いつか卑徒(ひと)になる日まで

酉島伝法のデビュー作「皆勤の徒」は衝撃だった。同作を巻頭に収めた同題の連作集は、第三十四回日本SF大賞を射止めた。選考委員ほぼ全員が一致しての受賞決定である。また、〈本の雑誌〉で二〇一五年におこなった「21世紀SFベスト100」(選者は鏡明、大森望、牧眞司)でも堂々の第一位に選出された。まさに怪物的作品といえよう。

2019.3.26  【今週はこれを読め! SF編】それでもなお、ひとは自由意志を希求する

ピーター・ワッツの長篇『ブライントサイト』の衝撃は忘れがたい。知性にとって意識は必然的なものではない。この大前提に、まず痺れた。

2019.3.13  【今週はこれを読め! ミステリー編】拉致監禁犯の父との対決〜カレン・ディオンヌ『沼の王の娘』

一口で言うなら、あらかじめ奪われた人生を取り返す小説だ。

2019.3.5  【今週はこれを読め! SF編】ティプトリー風の表題作から中国伝奇アクションまで

ケン・リュウ三冊目の日本オリジナル短篇集で、二十篇を収録。さまざまな傾向の作品を書きわける安定したストーリーテリングの作家だが、内戦や難民、差別、格差など現代的な問題を(作品によって濃淡はあるものの)設定と深く結びつくかたちで織りこんでいるのが特色といえよう。

2019.2.22  【今週はこれを読め! ミステリー編】恐ろしいのに止められない『あの子はもういない』

何の罪もない者が必要のない重荷を背負わされ、望まない人生の路を歩む。

2019.2.5  【今週はこれを読め! SF編】トリス、偽トリス、トリスタ、「自分である」ことの冒険

頭が痛い。意識が戻って最初に感じたのは、脳みそがひっかきまわされているような苦痛と、あと七日だよ、という笑い声だ。頭のなかで声がする。

2019.1.15  【今週はこれを読め! ミステリー編】血が滾る冒険小説『拳銃使いの娘』

血が滾る、としか言いようのない小説である。

2019.1.8  【今週はこれを読め! SF編】日本SFの新しいプラットホーム、ここから始まる。

SF出版では海外SF紹介から出発した東京創元社だが、2007年に日本SFの名作再刊に手を染め、2010年以降は創元SF短編賞(募集は前年から)によって次々と新しい才能を発掘してきた。いまや新鮮な日本SFの最重要供給源である。

2018.12.26  【今週はこれを読め! ミステリー編】黒人テキサス・レンジャーの闘い『ブルーバード、ブルーバード』

朝から嫌なことがあり、感情を抑えるのに苦労しながら一日を過ごした。

2018.12.25  【今週はこれを読め! SF編】破滅と再生の寓話、イヴを畏れるアダム

『紫の雲』は、翻訳が待ち望まれていた古典である。作者M・P・シールは1865年生まれ47年歿のイギリス作家、二十世紀になる直前から作品を発表しはじめた。この経歴は、年代の上ではH・G・ウエルズとぴったり重なる。

2018.12.18  【今週はこれを読め! SF編】ベテランから新人まで個性豊かな書き下ろしアンソロジー

もう何度も書いていることだが、ここ数年の日本SFは空前の収穫期にあって、ベテランから俊英まで多くの才能が質の高い作品を送りだしている。惜しむらくは本来の受け皿たるべきSF専門誌が隔月刊の〈SFマガジン〉しかなく、しかも連載中心になってしまっていることだ。一般誌やWebなどSFを受けいれる媒体は以前より広がっているものの、ジャンルの求心力となる場が圧倒的に少ない。

2018.12.11  【今週はこれを読め! SF編】食べ飽きない語り口の妙、滋味ゆたかな物語

清朝の中国江南地方を舞台とした美食ファンタジイ。食の描写は、性愛や感情の描写と同様、ごてごてと修辞を盛ればよいというものではなく、細部を際立たせようとすれば全体がぼやけてだいなしになる。勝山海百合はそこらへんが絶妙なのだ。

2018.11.20  【今週はこれを読め! SF編】他者の記憶、自分の輪郭、宿痾もしくは恩寵としての共感

第五回創元SF短編賞を受賞した「風牙」からはじまる連作集。風牙(ふうが)というのは作中に登場する犬(ラブラドール・レトリーバー)の名前である。しかし、実体があるわけではない。記憶のなかにいる犬である。少年がペットショップで出逢った、可愛い一匹。これから仲良しになるんだ。おじいちゃんが買ってくれて、風牙の名もおじいちゃんがつけた。

2018.11.13  【今週はこれを読め! SF編】ITによって変貌しゆくアクチャルな未来を描いた連作集

ITの発展、およびそれを取りまく文化によって、変わりゆく近未来を描く連作。作中で用いられるのは空想的な超テクノロジーではなく、いま現実にあるツールやメソッドであり、主題となるのも、いまの世界が直面している(あるいは、これから不可避に直面するであろう)アクチャルな問題だ。そして、もっとも注目すべきは、それに取り組む主人公たちの行動原理である。

2018.11.11  【今週はこれを読め! ミステリー編】北アイルランド一匹狼刑事シリーズ第二弾『サイレンズ・イン・ザ・ストリート』

出勤時、すべての警察官が車の底に爆弾がとりつけられていないか確認する。そしてけっこうな頻度で実際に爆弾を発見してしまい、失禁しながら処理班を呼ぶことになる。

2018.11.6  【今週はこれを読め! SF編】日本SFが生んだ奇書、得体の知れぬ迷宮的作品

吃驚! ドッキリしゃっくり! 飛浩隆がこんなゲテゲテな小説を書くとは!

2018.11.5  【今週はこれを読め! ミステリー編】ナチス殺人医師の虚ろな精神『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』

スリラーの名手ウィリアム・ゴールドマンに『マラソンマン』(ハヤカワ文庫NV)という作品がある。ナチの残党が主人公を拷問する場面があることで有名だ。健康な歯を歯科医のドリルで削るという想像するだけでも痛そうな拷問で、映画化作品では主人公をダスティン・ホフマン、ナチをローレンス・オリヴィエが演じた。

2018.10.16  【今週はこれを読め! SF編】星間宇宙船という完全密室、被害者も容疑者も探偵役も自分たち

SFミステリ。航宙中の宇宙船は理想的な密室だ。外からは侵入できず、逃げてもいけない。まあSFだからと開き直り超常的あるいはガジェット的な要素を足して、その前提を覆すことも可能だが、それをやったらミステリの要件がガバガバになる。『六つの航跡』はそういう抜け道をせず、こと「密室」の成立に関してはじゅうぶんフェアだ。

2018.9.26  【今週はこれを読め! ミステリー編】収容所の少女たちの共闘と友情の物語『ローズ・アンダーファイア』

----いつもこんなに簡単だったらいいのに。だれにも言う必要はなく、相手がただ理解してくれたらいいのに。いつもだれかが隣にいてくれたらいいのに。

2018.9.25  【今週はこれを読め! SF編】天才でマッドなお姉さんと、知性の普遍構造を解きあかす宇宙計算機

第五回創元SF短編賞を受賞してデビューした高島雄哉の、これが最初の単行本。受賞作を表題として、その続篇ふたつを併録している。一篇ごとに完結しているが、内容は深く関連しあっているので、すべて通して長篇とみなしてもかまわない。

2018.9.11  【今週はこれを読め! SF編】ひとつの地形として横たわるだけ巨竜が作品世界を支配する

《竜のグリオール》は1984年から断続的に発表されたシリーズで、つごう七篇を数える。本書はそのうち前半四篇を収録している。

2018.9.4  【今週はこれを読め! SF編】記憶は誰のもの? 意識はどこから? 迫真の近未来ノワール

近未来、脳内の記憶を、特定の切手サイズの素子に、保存・再生する技術が確立されていた。映像や音声だけでなく、味覚・嗅覚・触覚、さらには原体験者の当時の感情までも生々しく味わうことができるのだ。これを利用した擬憶体験(リメメント)は、新しいエンターテイメントとして浸透する。そのコンテンツ(MEMと呼ばれる)である原体験を提供する演者が、憶え手(メメンター)だ。主人公の宵野深菜(しょうのみな)もそのひとり。

2018.9.3  【今週はこれを読め! ミステリー編】極北の地での過酷な闘い『北氷洋』

大自然の真っ只中に取り残された人間は自分自身を見つめる以外にすることがない。

2018.8.28  【今週はこれを読め! SF編】焼死に至る〈竜鱗病〉があぶりだす、現代社会が抱える病理

うーん、やはり、ジョー・ヒルは画像的想像力が並外れている。

2018.8.14  【今週はこれを読め! SF編】生存戦略としての支配? それとも共生による進化?

人類の知能が急激に向上することで社会が混乱をきたす。そんな事態をポール・アンダースンは『脳波』で描いた。トマス・M・ディッシュ『キャンプ・コンセントレーション』は、知能を増進させる新種細菌の被験者による手記の形式で、思考地獄ともいうべき境地が綴られる。知能向上はかならずしも人間に幸福をもたらさない。

2018.8.10  【今週はこれを読め! ミステリー編】頼りない男の犯罪小説〜ジョー・ネスボ『真夜中の太陽』

まだ気がついていない読者のために書いておくが、ジョー・ネスボはミステリー界の宝だ。

2018.7.24  【今週はこれを読め! SF編】メタモルフォーシスと魅入られた者の情念

夏の楽しみは、東雅夫さん編の怪奇・幻想短篇集が読めることだ。2012年の泉鏡花『おばけずき』からはじまった平凡社ライブラリーの文豪怪異小品シリーズも、本書で7冊目となる。幻想短篇集はナイトテーブルにおいて、毎晩一篇ずつ、銘酒を味わうようにゆっくり読むのが理想だが、谷崎の文章の口当たりの良さにページをめくる手がとまらず、一気に読みあげてしまった。

2018.7.21  【今週はこれを読め! ミステリー編】痴話喧嘩から始まるどんでん返し『ブルックリンの少女』

喧嘩して恋人に投げつけた言葉がひどい結果を産んでしまう。

2018.7.6  【今週はこれを読め! ミステリー編】正義の探偵小説にして相棒小説『IQ』登場!

これは探偵という祈りについて書かれた小説だ。

2018.7.3  【今週はこれを読め! SF編】十三の珠玉、ミルハウザーの魔術に魅了される一冊

すべての作品が磨きぬかれた珠のごとく、ひっそり煌めいているミルハウザーの短篇集。ぼくは偏愛の読者なので、何人かの作家については「このひとが書くものなら習作や失敗作も含めてなんでも好き」なのだが、ミルハウザーはそういうレベルではない。贔屓目なしに、すべての作品がおそろしいほどの完成度なのだ。精緻な技巧によって、世界の不思議に接近していく。

2018.6.26  【今週はこれを読め! SF編】埃だらけの空気、花を携えた乗客、姿をあらわさないトラ

アルゼンチン幻想文学を代表するコルタサルの実質的な第一短篇集。1946年から50年までに書かれた八篇を収めている。「実質的」というのは、44年に短篇集『対岸』の原稿が完成していたものの、出版にいたらなかったからである(著者歿後の94年に出版)。『対岸』については邦訳が出たときに書評したが(現在は『JUST IN SF』に収録*)、そこではスタージョンやライバーを引きあいに出している。異色作家という位置づけだ。

2018.6.16  【今週はこれを読め! ミステリー編】少女の幽霊と孤島の殺人事件『空の幻像』

最果ての孤島とそこに伝わる幽霊伝説という絶妙の舞台で展開する、精緻極まりない謎解き小説。それがアン・クリーヴス『空の幻像』(創元推理文庫)だ。

2018.6.11  【今週はこれを読め! SF編】ヒロタカ レア・トラックス!

これは嬉しい一冊! 飛浩隆といえば、日本SF大賞を二度受賞した唯一の作家(2018年現在)であり、それどころか出した本すべてが同賞候補になった凄玉。だが、いかんせん寡作であり、ぼくと同年代のファンのなかには「飛さんの次の本が出るまでは死ねない!」とさまざまな健康法を試みている者までいる。

2018.5.25  【今週はこれを読め! ミステリー編】暗殺者見習いに向けた手引書『インターンズ・ハンドブック』

〈ヒューマン・リソース社〉の新入社員諸君、就職おめでとう。お悔みを言わせてくれ。

2018.5.18  【今週はこれを読め! ミステリー編】謎解き作家の楽しい短編集『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』

「あなたが、自分は警察が事件を解決する手助けができると思いこんでいるような作家でないといいんですが、といったんです」

2018.5.15  【今週はこれを読め! SF編】忘れることができるメモリ、未来においてインプットされた記憶

1992年に刊行された早瀬耕のデビュー長篇。一部で高評価を得ながら、広い注目を集めるまでにいたらず、また作者がその後、表立った作品発表をおこなっていなかったこともあって----第二長篇『未必のマクベス』が刊行されたのが2014年なので20年以上のブランクだ----埋もれた作品になっていた。それがようやく文庫化された。

2018.5.8  【今週はこれを読め! SF編】ボーイ・ミーツ・ガール物語のサイバーパンク的展開

冒頭の場面が印象的だ。ロンドンの川沿い、朽ちゆく街区の十四階建てのビルの屋上に腰かけている少年ハンター・ナッシュ。数ブロック先、さびれたスカイライン越しに、金持ちが住む高級マンション群がそびえている。ハンターのうちに滾っているのは、無軌道な衝動だ。なにかをしたい、しかし、なにをしていいかわからない。行き場のない気持ちは、ビルとビルのあいだを跳び越えるスリルへと向かう。たった五メートル、思い切ってジャンプするだけだ。

2018.5.1  【今週はこれを読め! SF編】皇国の欺瞞、ナチスの残虐、アメリカの矛盾

第二次世界大戦で枢軸側が勝利し、アメリカが太平洋側の日本合衆国(USJ)と大西洋側のナチス領の分割され、両者のあいだで武力衝突を含む緊張が続いている。

2018.4.24  【今週はこれを読め! SF編】インディーズならではの雰囲気、キノコのようにひっそり犇めいて

キノコをテーマにした怪奇・幻想小説のアンソロジー。原書は一巻本だが、邦訳は二分冊で本書はその第二巻。第一巻は、以前に紹介した。新しいアンソロジーを読むひとつの楽しみは未知の作家との出逢いだが、『FUNGI』はその度合いが甚だしく、ぼくが知っていたのは第一巻ではジェフ・ヴァンダミア、ラヴィ・ティドハー、W・H・パグマイア、第二巻ではニック・ママタスぐらい。

2018.4.17  【今週はこれを読め! SF編】消えてしまう過去、儚い現在、記憶のなかの世界

『プラネタリウムの外側』は連作集。有機素子コンピュータで会話プログラム(チューリングテストをクリアするレベル)を開発する南雲助教と、彼の研究室に関わるひとたちの物語だ。ITと現実感覚を結びつけたSFは数あるが、この作品はガジェット/アイデアばかりを前景化するのではなく、わたしたちが暮らしている日常、人間関係のなかで出逢う感情や感覚の地平で語られている。そこがとても新鮮だ。

2018.3.20  【今週はこれを読め! SF編】輝かしい未来を取り戻すために、ぼくができること

二十一世紀になっても世界はダメなままだ。というか、どんどんダメになっていないか。

2018.3.13  【今週はこれを読め! SF編】現代中国SFの洗練度の高さに瞠目

ケン・リュウは現代アメリカSFにあって、洗練された抒情性と巧みなストーリーテリングによって多大な人気を集める作家だが、中国SFの紹介者としても旺盛な活躍をつづけている。本書はそのひとつの成果だ。現代中国SFの最前線にいる七人の作家の小説十三篇・エッセイ三篇を、ケン・リュウが選び、英訳したアンソロジーInvisible Planets: Contemporary Chinese Science Fiction in Translation。それを日本語訳したのが、この『折りたたみ北京』だ。

2018.3.9  【今週はこれを読め! ミステリー編】えええっと声が出るミステリー『そしてミランダを殺す』

第二部を読み始めた瞬間に、ええええっ、と声を上げてしまう小説に何か上手い名前をつけられないものか。

2018.2.20  【今週はこれを読め! SF編】ゲームをつづける町、バスを待つばかりの人生

創元SF短編賞を受賞してデビューした石川宗生の第一短篇集。四つの作品を収録している。どれも、型破りのシチュエーションから出発し、予想もつかない方向へと発展していく。奇想小説だけど、奇想だけに価値があるのではなく、それを転がしていく手つきがひどく独特なのだ。

2018.2.5  【今週はこれを読め! ミステリー編】残酷さと恐怖をくぐりぬけた者たちの物語『蝶のいた庭』

「おそろしく寒い夜でした。雪が降っていて、ほとんどまっ暗でした----大晦日の夜のことです。この寒い夜のなか、ひとりの貧しい少女が帽子もかぶらず裸足で通りを歩いていました」

2018.1.9  【今週はこれを読め! SF編】異なる物理理論の宇宙が、この宇宙を浸蝕する!

『宇宙消失』では人間原理、『ディアスポラ』では六次元時空構造、『クロックワーク・ロケット』では直交物理学......と、手を変え品を変え、読者の科学理解をあっさりとぶっちぎってくれているイーガンである。多くのSFファンはサッパリわからないといいながら、そのなんだか凄えイメージと案外叙情的なところもある物語に大喜びして読んでいるわけですが、こんかい訳された『シルトの梯子』はもうわからなさの極地。下敷きになっているのは量子グラフ理論。聞いたこともありません。

2017.12.26  【今週はこれを読め! SF編】書いているのはタイプライターか私か? 狂っているのは誰か?

マイクル・ビショップが頭角をあらわしたのは1970年代半ば。ジョン・ヴァーリイやジョージ・R・R・マーティンなどと並び、ニューウェイヴで先鋭化したアメリカSFを、やや伝統寄りスタイルに引き戻しながらも、小説的洗練と新しい時代の感覚をほどよく盛りこんだ俊英----という印象が強い。とりわけ邦訳がある『樹海伝説』と『焔の眼』は、文化人類学の発想で異質な文化、オルタナティブな世界観を鮮やかに提示した。

2017.12.19  【今週はこれを読め! SF編】増殖し書き換えられる世界。存在は消えても記憶は残る。

第五回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。この欄で前回とりあげた津久井五月『コルヌトピア』と同時受賞だが、選考委員の選評を読むかぎりでは『構造素子』のほうがじゃっかん高く評価されているようだ。選考委員四人のうち東浩紀、小川一水、神林長平の三氏は小説家----それもロジックを積みあげるような作品を得意とする----であり、この作品の内容や構成により踏みこめたのだろう。

2017.11.21  【今週はこれを読め! SF編】ロンドンの闇のなかで繰り広げられる、神話世界のゲーム

ロンドンの闇にうごめく異形の存在がいる。気ちがい(クレイジー)ジルと呼ばれる魔女、数多くの避雷針がある農家を拠点とする博士(グッド・ドクター)、霊廟に眠るマントを羽織った伯爵、月に煩わされる狼戦士(ヴルフサーク)ラリー・タルボット、そしてルーン文字が彫りこまれた刃物を使うジャック。

2017.10.31  今週はこれを読め! SF編】精神を共有する「ネクサス」が拓くのは、理想郷か地獄か

テレパシーによって心がつながりお互いの感覚まで共有される----これまでのSFで何度も描かれてきたアイデアだ。

2017.10.24  【今週はこれを読め! SF編】偶然性と運命のアラベスク、あるいは過去からの迷い弾

レオ・ペルッツの作品は、無理やり分類すれば幻想小説、奇想小説、歴史小説などといえなくもないけれど、ぼくがいちばんしっくりくるラベルは「アンチミステリ」だ。

2017.10.17  【今週はこれを読め! SF編】ナボコフによる時間の織物、広がりゆくタペストリーの経験

『アーダ』の邦訳は、かつて早川書房《ハヤカワ・リテラチャー》に斎藤数衛訳があったが、こんかい日本を代表するナボコフ研究家・若島正の手によって新訳がなされた。

2017.9.19  【今週はこれを読め! SF編】ルールを目的とするルール無視、ポスト・トゥルースのゲーム

第三回ハヤカワSFコンテストに投じた『ユートロニカのこちら側』で大賞を射止めた小川哲の、これがデビュー二作目にあたる。

2017.9.15  【今週はこれを読め! ミステリー編】15歳が世界と出会うロード・ノヴェル『東の果て、夜へ』

一人前の大人になるというのは、子供の自分を殺すことでもある。

2017.9.12  【今週はこれを読め! SF編】アクチャルな未来の質感、テクノロジーと人間の新しい共生

多くのSFが描いてきたシンギュラリティは、AIが人間と同等の知性・意識を獲得し、さらにそれを凌駕してしまう臨界点だった。

2017.9.5  【今週はこれを読め! SF編】人間価値が低落した太陽系社会で「個人の死」は復権しうるか?

アダム・ロバーツはこれが本邦初紹介だが、2000年のデビュー以来コンスタントに作品を送りだし、中堅作家としての地位を確立している。SF賞の候補にもたびたびあがり、2012年発表の本書『ジャック・グラス伝』で英国SF協会賞とジョン・W・キャンベル記念賞の二冠を手にした。

2017.8.15  【今週はこれを読め! SF編】十年目を迎え、ますます好調な年刊傑作選。

創元SF文庫の《年刊日本SF傑作選》の十冊目。プロパーSFから文芸誌に掲載された奇想小説、ときに同人誌やネットで発表された秀作をピックアップする視野の広さが嬉しい。

2017.8.8  【今週はこれを読め! SF編】地下に埋もれた都市空間、失われた旧文明をめぐる冒険

2014年に発表された、ポストアポカリプスSFの新作。〈大惨事〉として記憶されているできごとで旧文明が瓦解してから数百年後、人類は地下に新しいインフラと社会を築いていた。

2017.8.1  【今週はこれを読め! SF編】風の名前を聞け。語られた神話としての人生。

異世界ファンタジイにしろ魔法学園小説にしろ、どうしてこうも長いシリーズが好きなのか。せっかく作りあげた設定やキャラクターを大切にしたい(読者の側からすれば「長くひたっていたい」)と思う気持ちはわかるが、それに値する設定やキャラクターがそうあるものではない。

2017.7.26  【今週はこれを読め! SF編】時間の因果を超える愛。たとえ宇宙が滅んでも。

梶尾真治は1971年のデビュー短篇「美亜へ贈る真珠」以来、時間テーマのロマンチックSFを多く手がけてきた。

2017.7.11  【今週はこれを読め! SF編】J・P・ホーガンを超える壮大なSFミステリにしてO・ヘンリーの情緒

日本の宇宙科学研究開発機構の無人宇宙探査機〈ノリス2〉が、小惑星パンドラから持ち帰ったのは、四万年から五万年前と推測されるホモサピエンスの化石人骨だった!

2017.6.27  【今週はこれを読め! SF編】ご先祖さまとの情事、過去へ未来へいそいそする艶笑譚

シルヴァーバーグはおびただしい著作のある作家だが、本書『時間線をのぼろう』は代表作のひとつといってよかろう。

2017.6.20  【今週はこれを読め! SF編】未来の化石を描く実験作「終着の浜辺」、アイロニーと詩情の「溺れた巨人」

J・G・バラードの短編を年代順に網羅する全五巻の全集の、これが第三巻。収録されている十九篇が発表されたのは1963〜66年で、SF界におけるバラードの位置を決定づけた《破滅三部作》----『沈んだ世界』『燃える世界』『結晶世界』----と重なっている。内容的にもつながりが見られる。

2017.6.13  【今週はこれを読め! SF編】メガストラクチャーの宇宙、遠未来の悪夢

伊藤計劃の原作をアニメ化する「Project Itoh」とのタイアップが成功したせいかどうかわからないけれど、早川書房のSFラインがいろいろ面白いコラボレーション企画を仕掛けている。

2017.6.6  【今週はこれを読め! SF編】名匠による娯楽長篇『スペース・オペラ』と、濃厚なたたずまいの短篇群

アメリカSF界で独自のポジションを築いたジャック・ヴァンスの魅力を、日本の読者へ伝えるために企画された《ジャック・ヴァンス・トレジャリー》全三巻が、本書で完結した。短めの長篇『スペース・オペラ』と、四つの短篇を収めている。

2017.5.16  【今週はこれを読め! SF編】一篇ごとに工夫を凝らす名手ケン・リュウ

ケン・リュウは小説が上手いなあ。物語が面白いというだけではなく、小説が上手い。

2017.5.9  【今週はこれを読め! SF編】21世紀のリアリティで描く、沙漠のユートピア建国

中央アジアの沙漠の小国アラルスタンで政変が起こり、政府の男どもがこぞって逃げだしたあとを、若い女性たちが協力して国家運営をおこなうはめになる。政治家が不在、互いに牽制しあう官庁は機能不全----となれば、わたしたちががんばるしかないじゃない!

2017.4.25  【今週はこれを読め! SF編】未知との遭遇、10のスタイル

副題が示すとおりのテーマ・アンソロジーだ。「ファーストコンタクト」とは、地球外生命体との接近遭遇である。ファースト、すなわち最初の接触なので、お互いのことがわからず、手探りになるし誤解や疑心暗鬼を生じる。その過程で、人類の文化や知性が相対化される。

2017.4.18  【今週はこれを読め! SF編】独自の二十一世紀日本を舞台にした異色の侵略SF

『光の塔』は、日本SF史を語るうえで欠くことができない名作だ。初刊は1962年。解説で日下三蔵さんが指摘しているように「SF専門作家による長篇SFの第一号」であり、その歴史的価値もさることながら、その大胆なアイデアと議論喚起的(コントラヴァーシャル)な展開は、こんにち読んでも力強さを失っていない。

2017.3.21  【今週はこれを読め! SF編】天使が見える神経学者、偏執狂の諜報プロ、神聖なるドラッグの探索

子どものころは素朴に、科学思考が信仰や神秘体験を駆逐すると思っていた。合理と実証をつきつめれば神や霊は否定しうる、と。もちろん、実際はそんな単純ではない。科学思考と信仰はじゅうぶんに両立する。

2017.3.7  【今週はこれを読め! SF編】幽精(ジン)が記した『千一日物語』、量子コンピュータの夢 - 牧眞司

昔の恋人たちは、別れたあと、それまでにやりとりしたラヴレターを海辺で燃やして気持ちに区切りをつけたものだ。しかし、現代ではそう簡単にはいかない。ネット文化のなかにいれば、SNSなどで別れた相手の情報がいやでも目に入ってくる。『無限の書』は、主人公アリフのそんな悩みからはじまる。

2017.2.21  【今週はこれを読め! SF編】計画すべきことが計画しつくされた宇宙で自由意志は可能か?

ピーター・ワッツが2006年に発表した『ブラインドサイト』は、人類とはまったく異なる知性との遭遇を扱ったサスペンスに満ちたファースト・コンタクトSFにして、多種多様なポストヒューマンのヴィジョンを内包した意欲作だった。

2017.1.31  【今週はこれを読め! SF編】超自然のニューヨークが舞台、編集キャリアよろよろ歩き

行ったことのない場所、これから訪れる町。想像をふくらませながら観光情報のページを繰る。

2017.1.24  【今週はこれを読め! SF編】ベスター第一長篇、第一回ヒューゴー賞、伊藤典夫初の長篇翻訳

『破壊された男』は記念すべき第一回のヒューゴー賞受賞作。1952年に〈ギャラクシー〉に三回分載で発表され、それが対象になった。当時のSFファンにとってはあくまで雑誌が主流であり、連載がかならず単行本になるという発想がなかった。その雑誌にしてもアメリカSF界にリーディングマガジンとして長らく君臨した科学技術主流の〈アスタウンディング〉の座を、よりソフィスティケートされた小説に力を入れる新興の〈F&SF〉や〈ギャラクシー〉が脅かしはじめた時期だ。実際、同じ年のヒューゴー賞の商業誌部門は〈アスタウンディング〉と〈ギャラクシー〉の同時受賞となった。

2017.1.17  【今週はこれを読め! SF編】イカロス、キリスト、そしてデヴィッド・ボウイ

デヴィッド・ボウイ主演映画の原作で、小説じたいは1963年が初刊、映画は76年の製作。

2016.12.28  【今週はこれを読め! ミステリー編】古典部シリーズ最新作『いまさら翼といわれても』

「奉太郎くんたちには、ちゃんと高校生活を送らせてあげたいんです」

2016.12.28  【今週はこれを読め! SF編】よるべのない世界、見知らぬ言葉、自分だけの記憶

エヴンソンは現代アメリカ文学の作家だが、SFやホラーのファンからも注目されている。先に邦訳された短篇集『遁走状態』(2009年)はローカス賞とシャーリイ・ジャクスン賞のリストにあがった。『ウインドアイ』(2012年)もジャクスン賞の候補となった。

2016.12.20  【今週はこれを読め! SF編】不思議な語り口、気味の悪い発想、この世のものとも思えない物語

ちかごろのチャイナ・ミエヴィルは『言語都市』や『都市と都市』などSFでの活躍が目立つが、もともとはダーク・ファンタジー『キング・ラット』で名をあげ「ニュー・ウィアード」と称する文芸潮流の旗頭となった書き手だ。"ウィアード(wierd)"は辞書によれば「不思議な」「気味の悪い」「この世のものとも思えない」などの意味を持つ。

2016.12.6  【今週はこれを読め! SF編】SF作家のイマジネーションとAI研究の最新知見が出会う

人工知能学会はこれまでも学会誌に日本SF作家クラブ会員のショートショートを掲載するなどSFへの理解・関心を示してきたが、本書はさらに一歩踏みこんだ画期的な企画だ。

2016.11.22  【今週はこれを読め! SF編】伊藤典夫ブランドが存分に堪能できる一冊

「伊藤典夫翻訳SF傑作選」と謳われた一冊。SFのアンソロジーにはさまざまな趣向のものがあるけれど、訳者名をブランドとして押しだしているのは珍しい。

2016.11.18  【【文学賞記者日記2016 11/18 第29回小説すばる新人賞贈賞式レポート】】16歳の新人作家、登場「『2分ぐらいここでしゃべれ』と言われて、『マジか!?』と」

ジャンルを限定しない長編小説の新人賞でいちばん打率が高いのは、集英社の小説すばる新人賞だろう。

2016.11.8  【今週はこれを読め! SF編】日本統治下のアメリカ、不確かなアイデンティティ

第二次世界大戦で枢軸国側が勝利し、アメリカは日本とドイツに分割統治されている。

2016.10.31  【今週はこれを読め! SF編】「どこまでもいっしょに行こうねえ」

ちょっと途方にくれている。山田正紀はどこへいくのだろう、どこまでいくのだろう?

2016.10.11  【今週はこれを読め! SF編】日常のすぐ隣、睡眠のわずか手前、半現実の領域

グラビンスキは1910年代末から作品を発表しはじめ36年に亡くなったポーランドの作家で、その作品はポーやラヴクラフトを引きあいに評価されている。

2016.8.23  【今週はこれを読め! SF編】「怒り」と「暴力性」の神話、「イノセンス」の希求

ハーラン・エリスンはアメリカSF界にそのひとありと知られるカリスマ的存在で、先鋭的な作品と本人の過激な言動によって多くのファンを集めている。

2016.8.16  【今週はこれを読め! SF編】FはフィメールのF、フジ隊員のF

1960年前後生まれのSF読者はたいてい夢中になって『ウルトラマン』を観ていたくちで、かくいうぼくも怪獣や星人の名前くらいはスラスラ出てくる。

2016.7.26  【今週はこれを読め! SF編】テクノロジーのなかの自由、祝祭的高揚のなかで暴力的に世界を毀損する

冒頭の情景が印象的だ。主人公のひとりドクター・ラングが、医学部の講義に出かける前に、高層マンション二十五階にある自室のバルコニーで電話帳を燃やした火のそばにすわり、ジャーマン・シェパードの尻肉を食っている。

2016.7.22  楽天ブックス: 著者インタビュー -あんびるやすこさん「『なんでも魔女商会21 おきゃくさまはルルとララ』 『ルルとララのコットンのマカロン』」

女の子が大好きなものといえばドレスにお菓子、そして魔法!そのすべてが盛り込まれた作品で、小学生を中心に絶大な支持を集めているあんびるやすこさん。少女たちが活躍する夢と希望に満ちた物語は、今や母親世代や男の子たちのハートも掴んでいます。絵本から読み物へと移っていく年代に、「読書の楽しさを教えてくれる」と大人気のシリーズに込めた思いをうかがいました。

2016.7.20  【今週はこれを読め! SF編】発表媒体も含め新しい試みがおこなわれつつある短篇SFの現在

年刊日本SF傑作選の九巻目。2015年に発表された短篇SFのなかから注目作を選んでいる。

2016.7.19  【今週はこれを読め! SF編】発表媒体も含め新しい試みがおこなわれつつある短篇SFの現在

年刊日本SF傑作選の九巻目。2015年に発表された短篇SFのなかから注目作を選んでいる。

2016.7.12  【今週はこれを読め! ミステリー編】倫理観を揺さぶるジョン・コラビント『無実』

『無実』はいい邦題で、原題を"Undone"という。「結び目をほどく」「服を脱がせる」「人を破滅させる」という意味のある動詞undoの過去分詞で、形容詞としても使われる。「結び目がほどけた」「服が脱がされた」「破滅させられた」という意味の1つ1つが小説を読んでいると次々に浮かび上がってくるではないか。

2016.7.12  【今週はこれを読め! SF編】作りものゆえの豊穣なリアリティ、ヴァンスを読む贅沢

新しいSFはつぎつぎと書かれていて先鋭的な話題作も生まれている。

2016.7.5  【今週はこれを読め! SF編】アンドロイドはジャムセッションで人間と勝負できるか?

中核となるテーマはAIによる人間性の再現。その題名が示すように、ジャズが題材としてさまざまに扱われている。これがきわめて重要。物語の味つけにとどまらず、この作品の本質につながっている。

2016.6.28  【今週はこれを読め! SF編】幸福のための不完全性、本物の感情を奏でるいにしえの物語

全三冊となる人類補完機構全短篇の第二巻。最終巻『三惑星の探求』には《補完機構》の枝篇(いちおう同じ歴史線だが別個のシリーズ)《キャッシャー・オニール》と《補完機構》以外の短篇が入るので、ふつうの意味での《補完機構》はこの『アルファ・ラルファ大通り』で大詰めを迎える。

2016.6.7  【今週はこれを読め! SF編】竜の神話と生物学のロジック、篠田節子のサイエンス・フィクション

篠田節子はこれまでも、毒性を有する変異カイコが猛威をふるう『絹の変容』、新種日本脳炎を媒介する軟体動物が蔓延る『夏の災厄』と、描線がくっきりとしたパニックSFを送りだしてきた。『竜と流木』はそれらにつづく最新作である。人間に仇なす生物の量感でみれば、こんかいはほとんど怪獣小説といってよい。

2016.5.24  【今週はこれを読め! SF編】似ているところと似ていないところ、愛の理由、人類進化のかたち

その町ではひとは工場でつくられる。食料も工場でつくる。食料とはひと以外の、動物や植物だ。夫は工場で働き、妻は子どもを育てる。わたしはいままでに二回結婚して、ゆうに五十人の子どもを育ててきた。そのうち名前を覚えているのは十五人ほどだが。

2016.5.24  外国文学は小学生から読んでいたが、最も影響を受けたのは安部公房の『箱男』 ------アノヒトの読書遍歴:鴻巣友季子さん(前編)

翻訳家として活動する鴻巣友季子さん。これまでに数々の海外の有名作品を翻訳し、代表的なものにイギリスの小説家エミリー・ブロンテの長編小説『嵐が丘』や、アメリカの小説家マーガレット・ミッチェルの著書『風と共に去りぬ』があります。

2016.5.17  【今週はこれを読め! SF編】解放されたパンドラ、温かい憧れと衝動的な飢え

人類を脅かす異形のものに、異形の力を備えながらなおも人間性を失っていない存在(いわばハイブリッド)が立ちむかう。

2016.5.10  【今週はこれを読め! SF編】鮮やかな個性が躍動し権謀術策が渦巻く、絢爛たる幻想武侠ロマン

一年ほど前、この欄でケン・リュウの短篇集『紙の動物園』を紹介した。「珠玉のような作品」という常套句があるけれど、ケン・リュウの珠玉は高硬度の宝石というより琥珀や鼈甲のように温かく柔らかい。その輝きは初長篇『蒲公英(ダンデライオン)王朝記』でも健在だ。

2016.5.1  「こんな小説は書けない」と村上龍を打ちのめした傑作短編集 講談社文芸文庫・私の一冊

このエッセイのために、久しぶりに各短編を読んでみた。

2016.4.15  【今週はこれを読め! ミステリー編】初めてでもマニアでも楽しい警察小説の金字塔

現代スウェーデン・ミステリーの産みの親というべきマイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーが手がけた〈刑事マルティン・ベック〉シリーズは、その後の北欧圏の後続作家に多大な影響を及ぼした。

2016.4.12  【今週はこれを読め! SF編】自己だけの世界が幻想する、はじまりの場所としての黄金郷

大量情報の制御によってひとの人生すら叙述可能となった未来を前提に、あらためて"死後の世界"の意味を問い直す力作『ニルヤの島』で、ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞してデビューした俊英、柴田勝家が待望の第二作を書きあげた。

2016.4.5  【今週はこれを読め! SF編】それぞれの時代の色合いと情感、スミスの不思議な未来史

コードウェイナー・スミスの全短篇をまとめる企画の第一巻。続巻として『アルファ・ラルファ大通り』と『三惑星の探求』が予定されている。〈人類補完機構全短篇〉とうたわれているが、このシリーズ以外の作品も『三惑星の探求』に併録されるそうだ。

2016.4.4  【今週はこれを読め! ミステリー編】ヨハン・テオリン『夏に凍える舟』の"潜水艦浮上"に驚愕!

「スウェーデンではときどき正体不明の潜水艦が目撃された、というニュースが報じられることがあるんだ。ロシア軍籍ではないかとか、UFOが海に潜ったんじゃないかとか、そのたびにいろいろな噂が立つよ。僕はそういうことに関心があるから、つい潜水艦、って言っちゃったのかもしれないね」

2016.3.22  【今週はこれを読め! SF編】ロボットの教養小説、SFを対象化するSF(みたいな小説)

ロデリックはミネトンカ大学のコンピュータ・サイエンス科で開発されたロボットだ。

2016.3.15  【今週はこれを読め! SF編】青春時代のヴァーリイ、老いて読むヴァーリイ

《八世界》シリーズの全短篇を集めた日本オリジナル作品集の二冊目で、六篇を収録。一冊目の『汝、コンピューターの夢』は以前に紹介した。

2016.3.8  【今週はこれを読め! SF編】閉じこめられた娘、自由にうごけないわたし

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアは1987年に亡くなっており、翌88年に刊行された本書が最後の短篇集となる。

2016.3.4  【今週はこれを読め! ミステリー編】知の好奇心に満ちたミステリー『プラハの墓地』

2016年2月19日、ウンベルト・エーコが亡くなった。享年84である。

2016.2.23  【今週はこれを読め! SF編】パンデミック後の未来、FBI捜査官コンビが不可解事件を追う

『ロックイン』は近未来SFミステリ、それも相棒(バディ)ものだ。

2016.2.16  【今週はこれを読め! SF編】音楽はゲームか魔物か? アメリカの実験に終着点はあるのか?

宮内悠介の新作は音楽がテーマだ。たんなる物語の素材にとどまらず、音楽の本質に深く関わっていく。

2016.2.9  【今週はこれを読め! SF編】ねじれた宇宙外交事情を背景としたウルトラマンの闘い

昨夏に刊行されたウルトラ怪獣アンソロジー『多々良島ふたたび』に続く、円谷プロ×早川書房の公式コラボ企画の第二弾。こんかいは書き下ろし長篇だ。

2016.2.2  【今週はこれを読め! SF編】壮大な復讐劇の背後で、多様な価値観が複雑に交錯する

こんなに綾のある小説だったのか! 新訳なった『デューン 砂の惑星』を読み、それまでの印象がかなり塗りかえられてしまった。

2016.1.26  【今週はこれを読め! SF編】歪んだ因果の閉空間に正真正銘の「終末」が訪れる

シャーリイ・ジャクスンの長篇小説は、これまで第五作『丘の屋敷』(創元推理文庫)と第六作『ずっとお城で暮らしてる』(同)が翻訳されている。

2016.1.12  【今週はこれを読め! SF編】騎士になる「ぼく」が負うもの──天上界の魔法、地下境の記憶、ひとの世の名誉

第一部が『ナイト』で、第二部が『ウィザード』。いちおう別々のタイトルがついているが、実際はひとつらなりの物語だ。

2015.12.8  【今週はこれを読め! SF編】世界が〈涯て〉に飲まれるとき、ぼくの記憶がはじまるとき

第三回ハヤカワSFコンテスト佳作受賞作。みずみずしく、切なく、そして普遍的な小説だ。『世界の涯ての夏』は、「世界」と「記憶」のもっとも根源的なところへ読者を導いていく。

2015.11.24  【今週はこれを読め! SF編】因習の現世、羈束の異界、鏡映しに展開するふたつの物語

題名の『みがかヌかがみ』は、中央のヌを隔てて「みがか」と「かがみ」が対称をなしているが、作品そのものもふたつの世界が鏡像のように互いを映しあう構成だ。

2015.11.17  【今週はこれを読め! SF編】「なんでもない」に滲む不吉、不穏、不条理、不思議

シャーリイ・ジャクスンの代表作と言えば何をおいても「くじ」で、アンブローズ・ビアス「アウルクリーク橋の出来事」やサキ「開いた窓」などと並び、"奇妙な味"の愛好家なら知らぬ者はいない超有名作だ。

2015.11.15  【今週はこれを読め! ミステリー編】ハメットの文体史をたどる作品集『チューリップ』

ハードボイルドと呼ばれる表現の形式には一応通史がある。

2015.11.4  【今週はこれを読め! SF編】乾ききった地上を血で潤す、無情の天使と三人の女たち

地下水層は涸渇寸前、地上の水系もすっかり痩せ細った近未来のアメリカ南西部。

2015.10.20  【今週はこれを読め! SF編】甦る『屍者の帝国』、読み換えられる『計劃』

伊藤計劃の三作品をアニメ化する「Project Itoh」と連動し、版元をまたいでの出版企画が相次いでいる。本書もそのひとつだ。

2015.10.15  「21世紀のSFベスト」牧眞司が偏愛で選んだ100冊

決定版の「21世紀のSFベスト100」は〈本の雑誌〉2015年11月号をごらんください。

2015.10.13  【今週はこれを読め! SF編】古代エジプトの孤高の愛と、現代ロンドンの温かな愛

ブラム・ストーカーが『吸血鬼ドラキュラ』の六年後にあらわした怪奇長篇。『ドラキュラ』が伝説的な怪異によせて東ヨーロッパ辺境の陰鬱なエキゾチズムを持ちこんだように、『七つ星の宝石』では古代エジプトの神秘が題材となる。

2015.9.15  【今週はこれを読め! SF編】箱から飛びだした〈量子猫〉。六十四卦のマッド・ミステリ。

新刊というにはちょっと時間が経ってしまったけれど(7月刊)、この作品を紹介せずにすますわけにはいかない。

2015.9.8  【今週はこれを読め! SF編】自由を貪る戦争か支配下の平和か。人類家畜テーマの新展開。

ロバート・チャールズ・ウィルスンは、ジョン・W・キャンベル記念賞受賞の『クロノリス--時の碑--』(2001年)、ヒューゴー賞を受賞した『時間封鎖』(2005年)を開幕篇とする三部作など、大仕掛けの「SFアイデア」と緻密な「心理描写」で定評のある人気作家だ。

2015.8.25  【今週はこれを読め! SF編】現実から逸れゆく船、海からやってくるゾッとする影ども

怪奇幻想小説の愛好家ならみなウィリアム・ホープ・ホジスンを知っている。

2015.8.18  【今週はこれを読め! SF編】できごとの断面を点綴し、宇宙史の大きなうねりを示す

1979年発表のデビュー作「137機動旅団」以来、谷甲州が取り組んできた《航空宇宙軍史》シリーズの最新作。

2015.8.4  【今週はこれを読め! SF編】現代日本SFの幅の広さを詰めこんだショーケース

あらためて「SFはいろいろだなあ」と感じいる。「いろいろ」の幅を年刊SF傑作選のパッケージにギチっと収めてみせるのが、大森・日下コンビの慧眼と手腕だ。

2015.7.28  【今週はこれを読め! SF編】狂気が生みだした「月」、「月」が夢見る言語化しえぬ現実

冒頭はいきなり天使降臨による日常の壊滅だ。もはや地上には安全な場所はなく、菱屋修介は自らの妄想がつくりだした「月世界」へと逃げこむ。そして、現実が分岐する。

2015.7.14  【今週はこれを読め! SF編】異文化での父子の生活、仮想世界に構成された人生、倫理の根拠を問う

『ゼンデギ』とは耳慣れぬ言葉だが、ペルシア語でLifeを意味する。物語の主要舞台はイランだ。主人公がふたりいて、最初は別々の物語が交互に語られ、徐々によりあわさっていく。

2015.6.23  【今週はこれを読め! SF編】イーガンに先駆けて自由意志を主題化した傑作「仮面(マスク)」を含むベスト選

『ソラリス』の文庫化、『泰平ヨンの未来学会議』改訳につづき、ファン待望の一冊が出版された。欣快! 

2015.5.19  【今週はこれを読め! SF編】大きい世界を映す小さな言葉の粒、妙なるアイデア、巧みなプロット

ジーン・ウルフの第二短篇集。ちょっと変わったタイトルは、各収録作がなんらかの「日」----祝祭日もあれば狩猟解禁日みたいなものもある----に対応しているからだ。

2015.4.28  【今週はこれを読め! SF編】圧倒的「他者」としてのソラリス、愛と畏怖を生む「他人」としてのハリー

大傑作。SFで一冊だけ「不朽の名作」をあげろと言われれば、迷いなく本書を選ぶ。

2015.4.14  【今週はこれを読め! SF編】クビーンの宇宙論、あらかじめ破滅を胚胎した夢の国

幻想都市文学の傑作。新訳ではなく復刊だが、これを取りあげないわけにはいかない。

2015.3.17  【今週はこれを読め! SF編】硝煙と呪術が織りなす問答無用のオカルト激ヤバ抗争! でも青春小説

原題はApocalypse Now Now。フランシス・コッポラ監督の映画『地獄の黙示録』(Apocalypse Now)を意識しているのは明らかで、邦題もその意を汲んでいるのだろうが、内容に合わせるとしたらちょっとカタい。

2015.3.10  【今週はこれを読め! SF編】『地球の長い午後』ばりの異様な世界で、環境と性をめぐるテーマが展開される

愛琉(アイル)は熱帯雨林に暮らす少女。森のなかには数え切れないほどの生物がうごめき、さまざまな危険が潜んでいる。

2015.1.22  芥川賞作家・小野正嗣が描く ある少年の物語

小さな入り江とそれをぐるりと囲む低い山並みに挟まれた、海辺の小さな集落。

2015.1.20  【今週はこれを読め! SF編】埋もれていた奇貨の発見、知られざる鉱脈の探索

画期的なアンソロジー。博識の読書家にして希代のブックハンターである荒俣宏ならではの異形----いや失礼、偉業だ。『大山脈』を謳う心意気と、それに見合う内容を実現してしまう膂力に痺れる。

2015.1.13  【今週はこれを読め! SF編】マイノリティとしてのロボット----現実社会の依存/搾取を前景化する

vNとはコンピュータの基礎を築いた数学者フォン・ノイマンに因む符号で、作中では自己増殖する人間型ロボットをさす。

2015.1.5  【今週はこれを読め! SF編】直線の物語ではなく、幾重にも広がる空間としての小説

サミュエル・R・ディレイニーの全中短篇を網羅した豪華な一冊。

2014.12.23  【今週はこれを読め! SF編】日常性への衝撃としてのSF、日常を綻ばせる表現による文学

妻が巨大化していく。SFの特質を「日常性への衝撃」と見なしたのは石川喬司だが、その説に沿えばこの小説は間違いなくSFである。衝撃度は大きい。

2014.11.11  【今週はこれを読め! SF編】〈エリアX〉への入界(イニシエーション)

地球上に突如あらわれた狂った生態系の異界。それは〈エリアX〉と名づけられた。

2014.11.3  【今週はこれを読め! ミステリー編】謎解きに淫する読者は『フライプレイ!』を読め!

いわゆる「本格ミステリー」に殉じる人々の典型がここには描かれている。

2014.10.21  【今週はこれを読め! SF編】アタリマエに満足しない編者が満を持して放った新アンソロジー

大森望編のオリジナル・アンソロジー・シリーズ《NOVA》全10冊は、第34回日本SF大賞特別賞を受賞した。

2014.10.20  【今週はこれを読め! ミステリー編】バンヴィルが書く新たなマーロウの物語

一般小説の作者、それも既に地位を築き上げた書き手が別名でミステリーを手がける例は珍しいことではない。

2014.9.12  【今週はこれを読め! ミステリー編】87歳のヒーローあらわる!『もう年はとれない』

いわゆる団塊の世代が定年を迎え始めたころ、これからは老人の、老人による、老人のためのエンターテインメントがどんどん市場に出てくるだろうね、とエイブラハム・リンカーンのようなことを考えた。

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